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作品に囲まれながら寝たわけではないのだが、バウハウスの3代目校長であり、建築家だったミース・ファン・デル・ローエの設計したガラス箱のような美術館内に、
まるでインスタレーションのように設置されたベットに眠る。
パジャマ姿で、ぺたぺたスリッパを履いて、カタログ売り場を抜け、トイレに行って歯を磨いていると、 なんだか、とってもわくわくしてきて、思わず、こおどり。 むか〜し、デパートに寝泊まりしている女の子の本を読んだ。よく覚えてないのだけれど、 誰もいなくなった静かなショーウィンドーの中で、スケートボードを走らせたり、ふっかふかの布団に寝たり・・・とても憧れた、その気持ちを、急に思い出す。 ぽつぽつと置かれたベットに、皆パジャマでごそごぞ潜り込む。ぺろっと人前でズボンを脱いで、パンツ1枚の人もいる。 アイマスクを準備して来てる人や、シャンペンを飲んでいる人も。 ちょっと隣の人と目配せしたりして、知らない人たちなのに、なんだかちょっと修学旅行のよう。 |
真夜中12時、まっしろなドレスを着た歌手のハイケ・シュミットさんと、チェロをかかえた、ティロ・トーマス・クリーガーさんがやってきた。 ベット横にはランプがあり、そのランプの傘部分には、子守唄の楽譜や、眠りに関する詩等が書かれている。 それを読んだり、歌ったりするたび、そのランプの灯をぱちり、と消す。 歌手とチェロ奏者の2人は、ベットとベットの間を走ったり、ベットの側に寝転んだり、合唱したり、踊ったり・・・あ、ね、眠い・・・。 最初は、そっとカメラで写真を撮ったりしていた人たちも、2時頃まで行われたコンサートも最後のランプが消される頃には、みんなぐっすり。 私も、最後のほうはもう記憶がない。最後のランプが消えるまで、見ようと思ったのに・・。とろ〜りと夢に入っていく、ここちよい落ち方だった。 夢を見た。アートな夢ではなかったが、夢の中で、ギャラリーにいた。物音で目をさましガラスばりの四角い建物と、 それをすかして見える、ソニーセンターの姿にあっ、ここ美術館だった・・。と思い出す。 |
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むくんで目が開かないので、顔を洗いにトイレに降りて行くと、パンツ1枚のおにいちゃんが、展覧会のカタログをめくっている。
『おはようございます・・』『あっ、おはようございます』 パジャマ姿で、入り口まで行くと、びしっと制服姿の警備員が。『あ、えー・・おはようございます・・』なんか変。 奇妙なプライベート空間と公共の空間が混じりあっている感じだ。 9時に美術館が開館なので、朝はなんと6時から、目ざましコンサートがはじまった。昨日2時に眠ったので、皆、もーろーとしているようだ。 わりと大きな声で、夢をみましたか?とか、目ざまし時計、という歌を歌う横で、係員の人が、枕元に朝刊を配りつつ、声をかけている。 美術館内のベットの上で、珈琲を飲み、新聞を読んでいる人がいる。 |
外を早朝ジョギングしていたおじさんが、館内にふっと目をやって、ぎょっとしたように目をむいてこちらをみたので、
窓際のベットの人たちどうしで、顔を見合わせて笑ってしまった。 枕を座布団代わりにして、皆で丸くなって、紙バックに入ったホテル、グランドハイアットでの朝食を食べた。 クロワッサンとサンドイッチ、フルーツ。ぼそぼそ食べながら、隣の人と昨日眠れました〜?最後までコンサート見ました?と言葉を交わす。 この企画は、シャンソンを勉強した、歌手のハイケ・シュミットさんが『マイクを使わない、静かに聞いてもらうコンサートを開きたかった。 自分もベットにごろごろしているのが好きだったので、ベットに入って聞けるようなコンサートをしてみたら・・』と、思いついたそう。 色々別の場所で開催したい、と彼女は言っていたけれど、私としては、色々な美術館でみてみたい!作品の間で寝られたりできれば、もっと良いのに、と思った。 なんというか、アートを見る姿勢、自分の状態が違うので、作品のみえ方もきっと違ってくると思えたので。 実のところ、簡易ベットが辛くて、良く眠れず。帰宅してから、また昼まで寝てしまったけれど、 もし、またどこかで開催されることがあれば、ぜひ行ってみたい!次は、現代美術館の、ハンブルガーバーンホフで、やってくれないかなぁ。 ヨーゼフ・ボイスの、脂を使った作品の隣で眠ってみたい。モナ・ハトゥムのベットの作品とかでもいいけれど(悪夢を見そうだ)。 それとも、キーファーの鉛の飛行機の下とか? もしくは、自然科学博物館の、恐竜の骨の下か。 シュミットさんに、日本語の子守唄の楽譜を送る約束をしたので、ぜひ提案してみよう。 |