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(c)Chiristian Borchert |
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さてその“旧東独の美術”展。130名のアーティストによる400もの作品がぎっしり詰まったものでした。
展示はベルリン学校/ユートピアとリアリティ/詩的な抽象など20のテーマに分けられて並べられていましたが、一番面白かったのは写真でした。上写真はChiristian Borchertという東独で非常に有名だった写真家の作品で、同じ家族を1983~85年、93年に改めて撮るというもの。彼が80年代に写真を撮った時は多分、壁崩壊を考えていたわけではないでしょうけれど、壁崩壊の激動の時代を越え、生きていく人達の顔、その空気を写し出す作品となったと思います。 ただ、純粋にアートとしてどうこう、というよりは非常に歴史を念頭においてみる作品だったと思います。彼等の服は壁崩壊後どう変わった?台所用品は?顔に疲れが刻まれているような気がする? たまたまそこで知り合いとなった旧東独出身のアーティストはこの家族写真の中に友だちを発見し、『おお〜若い!服、これ見てみてよ!典型的な東の服!』などと盛り上がっていました。 私自身も、なるほどこの顔がこうなるのか〜、とか、服や小物をじっくりじっくり観察。展示には3家族の写真が紹介されていましたが、それらをくらべるのも面白かったです。 その他これは!と思ったのは、アレクサンダープラッツ近くにあるマルクス&エンゲルス像製作過程等を撮ったSibylle Ebersbach の写真。色んな顔の(ちょっと太めだったりヒゲが多かったり少なかったり)マルクスやエンゲルスの首が並べられている所から、製作過程途中首無しの2人の写真など。これは皆面白いと思うのかポストカードにもなっています。(下写真) |
しかし、これを見ながら、これはキュレーターの2人が言うように、純粋に美術として良い、興味深いものだろうか?と疑問に思ってしまったのです。 ドイツに来てから“自分の文化的背景をアピールする製作”に疑問を感じながら製作をしてきました。また、“作品を、まったくそのバックグラウンド無しにみることは可能なのだろうか”もしくは、“バックグラウンドを知らないと分からない、伝わらない作品ってどうなんだろう?”という疑問も、何かの作品をみる度に頭に浮かびました。今回の“旧東独の美術”展に関しては特に、キュレーターがどう言おうとやはり、歴史的背景無しには成り立ちにくい展示(旧東独の、とくくった時点で)だったと思いました。絵や彫刻を見ても、色使いや、モチーフの選び方等、やっぱりどこかで作品を見る時に“やっぱりこれは旧東独っぽいなあ”と思える場所を探しながらみるのを止められなかった。 そんなこと関係ない、良いものはイイ!と言える程力のある作品もなかったですし・・・。そしてまた、これが閉じられた社会主義国に生まれた表現のすべてだ!と言える程の展示でも残念ながらありませんでした。80年代などのパフォーマンス作品などの多くは現存する資料がないということで展示されなかったし・・。 面白く無くは無かったのですが、あえて、“旧東独の美術”を歴史や政治との結びつきを追求しながら企画した方が内容の濃い、面白い展示になったのではないかな、と思いました。 |
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Kunst in DDR: 10月26日まで。
Neue National Galerie, Potsdamer Str.50
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