Linienstrasse



リーニエン・シュトラーセは、ミッテ、オラニエンブルガー・シュトラーセからカール=リープクネヒト・シュトラーセまでを横切る長い通り。オラニエンブルガー・シュトラーセ寄りになると建物も新しくお色直しをすませ、1階にショップやギャラリーなんかが入っていてまた違った感じだが、今回はローゼンターラー・シュトラーセ周辺の地味な道を見てみたい。
この辺りは、カール・マルクス・アレ−で書いた感じとはまた違う『東』の雰囲気を色濃く感じる。 ドカーン、バーン、と威圧的な建物が並んでいるのがカール・マルクス・アレーなら、 こちらはプラッテンバウと呼ばれる旧東独独特のパネル建築がちまちまと並ぶ。 このプラッテンバウ、四角い小さな窓やベランダがずらり、ぎっしりと並び、日本の団地にちょこっと似ている気がする。色が褪せたようなグレー調パステルカラーなのも団地、社宅っぽい・・と書いた所で、中学校の側にピンクアパートだったかピンクハウス?だったか、そんな通り名がつけられてた団地があったのを思い出した。塗り直しの際に派手なピンク色に塗り直されたのでそんな渾名を頂いたのだったが、“ピンク”のイメージが良くないと住民から抗議され、上からまた違う色を塗ったの
だった。今どうなってるのかな?
そんな日本の団地を思い起こさせるこのプラッテンバウ、旧東独で作られた、何が混ざってるのか良く判らない建材のパネルを組み合せて作られている。 近寄ってみると、ツブツブが浮き上がった不思議な表面加工だ。作り方は良く判らないけど、資源不足の東独、ありとあらゆる材料を混ぜて作っていた事は想像に難くない。今でもファンの多い東独国産車トラバントは紙をプラスチックで固めた不思議な素材で作られていて、事故ったりするとすぐぐしゃぐしゃになる。一度ベンツとトラバントの追突事故が目の前で起こった事があった。その時、ぐしゃりと漫画みたいな音がしてトラバントの車体前部が歪み、歪みに耐え切れなかった窓ガラスが割れもせず、ぽーんとその形のまま枠から外れて空を飛んだのだ。ベンツ、無傷。車体はやわ、故障はしょっちゅうで、馬力が無い、その上排気ガスの王様・・と書くと良い所ないじゃん!と思われる方もいるだろうが、出来の悪い子程かわいい?というわけで、トラバントファンにとっては自分で工夫して修理する程楽しい事はないそうである。(もう修理しようにも部品が無かったり、もう修復不可能だったりして、即興的に応急処置をする人が多い。私の知り合いは洗濯バサミを使って修理していた・・!)
しかしトラバントと違って、このプラッテンバウにはあまりファンが居ないと思う。プラッテンバウに住みたい!って言う人を聞いた事がない。 ドイツ人が『プラッテンバウはディプリ(憂鬱)〜』と評するのは何度か聞いた事があるが・・。
と思っていたら先日、日本から知り合いがやってきた時に、『ちっちゃくて可愛いアパート!』とプラッテンバウを誉めていた。 そうか、プラッテンバウ=旧東独→暗い、灰色・・等の勝手な前知識がプラッテンバウそのものをみる目にフィルターをかけているのかもしれない、だから憂鬱に見えてしまうのかもしれない、と思った。
旧東独の典型的な建物として、ある意味非常に歴史的価値のある建築といえなくもないこのプラッテンバウ。 カードゲームや、切り抜いて組み立てられる紙製模型等にもなっていて、ちょっとしたベルリン土産にも良い。
そしてリーニエン・シュトラーセでまた良く見かけるのが貼る形のグラフィティみたいなもの。 スプレー等で落書きするのはどこでも良く見かけるがベルリンでは、小さなメモ帳大の大きさの紙に何かを書いたモノが壁、自販機、ゴミ箱、ポスト、電車の窓、 そこら中に貼られている。ここの通りの一角にはびっしりそれらが貼られた窓がある。 なかなか面白い。紙を自分達でノリをつけて貼っている人達もいるが、黄色や薄緑色のは郵便局でただでもらえる、住所とか、内容物を書き込んで小包に貼るためのシールの上から落書きしているものだ。こーゆーのが、すごくベルリン。
お金がかからない、ある意味手抜き、イリーガルぎりぎり、なんだかアート?


*通りのヒトカケラ*
ジャーマンソウル、という本を御存じだろうか。
都築響一氏等著の、
ドイツの庭先に居る陶器の小人の写真を集めた本。
すごいキッチュだけど、
ドイツ人のある一面を表している気がしないでもない。






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